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100年以上続く伝統の味 職人の手でつくる逸品「かつお生節」
三重・尾鷲に伝わる郷土の味 “半生”で食べる鰹節
山々を背に熊野灘に面した三重県尾鷲市。県下でも有数の漁業の町です。中でも黒潮にのって水揚げされる鰹は、身がしまり、適度な脂がのった極上品。ここで100年以上続く伝統の味が「かつお生節」。鰹を茹でて燻した半生状態の鰹節で、傷みやすい鰹を日持ちさせるための保存食として親しまれてきました。香ばしい風味と鰹のうまみがクセになる尾鷲の特産品です。
“尾鷲の味”を守りたい 伝統製法を守る職人の情熱
「大瀬勇商店」は明治35年に創業した老舗の海産物店。最盛期には数十軒あった同業者も時代とともに減り、かつお生節を作るのはわずか2軒に。それでも他にはない、この味を求めて全国から注文が舞い込みます。四代目の大瀬勇人さんは「食べてみたい、欲しいという人がいる限り、守っていきたい」と昔ながらの製法でかつお生節を作り続けています。
燻しに使う植物も尾鷲の山から調達 ”地のもの”にこだわる
早朝から漁港に足を運び、自らの目で素材の状態を確認。生でも食べられる上物の鰹を仕入れ、鮮度があるうちに手早くさばきます。
続いて植物のウラジロと、匂い消しになる薬草の天台烏薬(てんだいうやく)を「煮かご」に敷き詰め、鰹の身を並べます。こうした植物は全て地元の山で調達。先代に倣い、決まった場所で必要な分だけを調達。「尾鷲で作るものだから、尾鷲らしく」自然に恵まれた土地だからこそ、地のものに徹底的にこだわる。大瀬さんの信条を感じます。
昔ながらの製法を守り 手間を惜しまない
さばいた鰹は一晩寝かせた後、「煮熟」という工程に。90℃に沸かした井戸水で1時間40分茹でます。低すぎれば生煮え、高ければうまみが逃げる。水を足しながら温度を保ち続ける根気のいる作業です。
茹で上がった鰹を燻す薪は、尾鷲産の桜やウバメガシ。昔ながらの「手火山式焙乾法」という製法で、熱と煙でじっくり乾燥させながら香りをつけていきます。およそ3時間、燻し具合が一定になるよう、休む暇はありません。火からおろすタイミングは表面が焦げる直前、ここを見極めるのが長年の経験と勘によるもの。まさに職人の技です。
そのままで酒の肴に ひと手間加えておかずにも
2日間かけて完成した「かつお生節」は、香ばしい風味に鰹のうまみが凝縮。尾鷲では漬物と和えてしょうが醤油で食べるのが、地元の楽しみ方。薄く削ぎ切りにしてマヨネーズを添えれば、お酒のあてにぴったりです。他にも煮物やお茶漬け、サラダのトッピングなど、さまざまなアレンジで料理にもよく合います。
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